長屋の子育て日記

根津の長屋の子育ての日々について写真と文で綴る
CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< November 2017 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
<< 公共の時間 | main |
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | スポンサードリンク |
長屋の師匠


夕方になるといつもステテコ姿で表に出て、
酔っ払ってタバコをふかしていた。
路地裏で、そして町の辻々で、
上機嫌な鼻歌と大声を聞くたび僕は
頭を垂れて通り過ぎたものだった。

たまの休みに居間でくつろいでいると決まって、
「いるか」とひと声のうちに敷居をまたぎ
上がり框に腰掛けてタバコに火をつけた。
「最近の若いもんはよ…」
終わりのない説教を聞くたび僕は
うなだれて天を呪ったものだった。

そんな彼がある日忽然と僕の前から姿を消した。
厭味と迷惑と鬱陶しさと、
濃密な甘さと喪失感と。
矛盾と葛藤に満ちた記憶を遺して
師匠は僕の前から姿を消した。

血のつながりもない近くの他人がもたらした
押しつけがましいほどの親近感。
父親でもないただ一人の男が遺していった
鬱陶しいほどの存在感。
望むと望まざるとに関わらず伝えられた
濃密すぎるコミュニティの流儀。

師匠がいなくなって初めて気づいた。僕は
伝えられてしまったことに。
受け継がれてしまったこのものを次に
つながなければいけないことに。
この生命のバトンを巡るリレーに
巻き込まれてしまったことに。

ふと思い出した夕暮れの藍染大通り。
夜の帳の降りかけた電柱の下に
ひとり佇む師匠がくゆらせた一条の煙を。
厚い眼鏡の奥の小さな瞳に映っていた
その淡い光の色を。


| 今日の出来事 | 07:11 | comments(1) | trackbacks(0) | けいじ |
スポンサーサイト
| - | 07:11 | - | - | スポンサードリンク |
コメント
こんにちは、初めまして。
私は広島の30歳の会社員です。
さきほどそちらのことをテレビで拝見いたしました。
(だいぶん前のものかもしれませんが・・)

放送を見て、なぜだか涙が止まりませんでした。
気になってすぐに検索してしまい、ここにたどり着き、思わずコメントしてしまいました。

東京という大都会の中にこんなにも素敵なご近所付き合いがあることに本当に感動しました。

私もそちらのような近所付き合い・人間関係、非常に憧れます。「長屋の師匠」のような方が身近にいらっしゃられたこと、とても羨ましいです。
都会・田舎だから・・ということではなく、周りの人々とどう付き合っていくかという気持ち一つなんだなぁと感じさせられました。

僭越ながら、過去の記事も読ませて頂きました!
とても共感させられることも多く楽しく読ませていただきました。
是非これからもブログ続けてください。
楽しみにしています。

突然失礼いたしました!
| YOSIMI | 2012/06/09 3:20 PM |
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://kosodate-note.jugem.jp/trackback/141
トラックバック
SEARCH
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
PROFILE
OTHER